猫がいるから施設に入れない?介護現場で見た高齢者と猫の不安
「猫がいるから、施設には入りたくなかった」
これは、私が介護の仕事をしている中で、ある認知症の高齢者の方から聞いた言葉です。
その方の施設の居室には、ご自宅で飼っていた猫の写真が飾られていました。
ご家族の名前を思い出すことが難しい日があっても、
昔一緒に暮らしていた猫の名前は、
歴代の子までスラスラと話されることがありました。
写真を見ながら、
「この子は、どこに行ったんだろうね」
と話されることもありました。
その言葉には、深い愛情と、少しの不安がにじんでいました。
猫と暮らすことは、ただの趣味ではない
猫と暮らすことは、単なる趣味ではありません。
高齢の方にとって、猫は家族であり、話し相手であり、日々の暮らしを支えてくれる存在でもあります。
朝起きて「おはよう」と声をかける相手がいる。
ごはんを用意して、毛づくろいを眺めて、ひなたぼっこを一緒にする。
そうした何気ない時間があるからこそ、
「今日も起きよう」「今日も暮らそう」と思えることがあります。
介護の現場にいると、猫や犬などのペットの話をされる方は少なくありません。
散歩中に近所の家を見て、自分の家を心配される方。
他の人が連れている犬や猫の話をきっかけに、
自宅に残してきたペットのことを思い出される方。
その姿を見るたびに、ペットは高齢者の暮らしの中で、
とても大きな存在なのだと感じます。
「施設に入る」ことが、猫との別れに感じられてしまう
年齢を重ねると、体調の変化や病気、転倒、認知症の進行などにより、
入院や施設入所を考えなければならない場面があります。
しかし、猫と暮らしている方にとって、施設に入ることは、単に住まいを変えることではありません。
「猫と離れなければならない」
「この子は誰が見てくれるのか」
「私がいなくなったら、この子はどうなるのか」
そうした不安と結びついてしまうことがあります。
実際に、猫のことが心配で、受診や入院、施設入所の判断が遅れてしまう可能性もあります。
本人にとっては、猫を置いていくことが、自分だけ助かるように感じられてしまうこともあるのです。
だからこそ、猫と暮らす高齢者の支援では、本人の体のことだけでなく、猫の行き先や暮らしの継続についても、早めに考えておくことが大切です。
元気なうちに考えておきたい「猫のこれから」
大切なのは、何かが起きてから慌てて決めることではありません。
元気なうちに、少しずつ確認しておくことです。
たとえば、次のようなことを考えておくと安心につながります。
・もし入院したら、猫のごはんやトイレの世話は誰がするのか
・長期入院になった場合、誰に相談するのか
・施設に入ることになった場合、猫はどこで暮らすのか
・家族や知人に預ける場合、費用はどうするのか
・猫の年齢、病歴、性格、かかりつけの動物病院を誰が把握しているのか
・自宅が空き家になる場合、家と猫の両方をどう守るのか
こうしたことは、頭の中で何となく考えているだけでは、
いざという時に周囲へ伝わりません。
書き残しておくこと。
家族や支援者と共有しておくこと。
必要に応じて、専門家と一緒に整理しておくこと。
それが、猫との暮らしを守る第一歩になります。
ペット信託や家族信託という選択肢もある
猫の将来を考える方法の一つに、ペット信託があります。
ペット信託とは、簡単に言えば、
猫のためのお金や世話の方法を、あらかじめ決めておく仕組みです。
「もし自分に何かあったら、このお金を使って猫の世話をしてほしい」
「この人に猫を託したい」
「猫の医療費やごはん代として、この範囲で使ってほしい」
そうした希望を、元気なうちに整理しておくことができます。
また、家族信託という方法を使って、
家族や信頼できる人に財産管理を任せ、
その中で猫の世話に必要な費用を考えておくこともあります。
もちろん、すべての方に信託が必要というわけではありません。
まずは、家族との話し合い、
預け先の確認、猫の情報整理、費用の準備など、
身近なところから始めることが大切です。
そのうえで、必要があれば、行政書士、司法書士、弁護士などの専門家に相談する方法もあります。
「猫がいるから施設に入れない」を、ひとりで抱え込まないために
猫がいるから施設に入れない。
猫が心配だから入院できない。
自分に何かあった後、この子がどうなるのか不安。
こうした悩みは、決して小さな悩みではありません。
高齢者本人にとっては、これからの生活を左右する大きな問題です。
そして、家族にとっても、急な入院や施設入所の場面で、猫の世話や住まいの管理をどうするかは、現実的な課題になります。
にゃんとも 住まいと猫の相談室では、猫と暮らす高齢者の方や、そのご家族の不安を一緒に整理しています。
介護の現場で見てきた高齢者の暮らし。
行政書士として関わる、相続・遺言・死後事務・信託・住まいの問題。
そして、猫と暮らす人の気持ち。
その間にある不安を、制度だけでなく、気持ちの面からも一緒に考えていきたいと思っています。
猫との暮らしを守るために、早めに話しておく
猫との暮らしは、人生の大切な一部です。
だからこそ、入院や施設入所、認知症、相続、空き家といった現実の問題が出てきたときに、猫のことが後回しにならないようにしておく必要があります。
「まだ元気だから大丈夫」
「家族が何とかしてくれるはず」
「その時になったら考えればいい」
そう思っているうちに、判断する時間が少なくなってしまうことがあります。
大切なのは、早めに考えることです。
そして、ひとりで抱え込まないことです。
猫がいるから不安になるのではなく、猫がいるからこそ、これからの暮らしを丁寧に準備する。
そんな考え方が、これからの高齢者と猫の暮らしには必要なのだと思います。
にゃんとも 住まいと猫の相談室では、猫と暮らす方の入院・施設入所・住まい・相続・猫の行き先について、初回相談を行っています。
猫との暮らしを守るために、まずは今の不安を言葉にするところから、一緒に始めてみませんか。
この記事を読んで、「自分の場合はどう考えればいいのだろう」と感じた方へ。
猫のこと、家のこと、相続や手続きのことは、
ひとつだけを切り離して考えるのが難しい場合があります。
まだ何も決まっていなくても、家族に話せていなくても大丈夫です。
まずは60分、今の状況を一緒に整理してみませんか。
